弾きが旅だよ人生は! YOYOGI DE 360度ステージ囲みまくって熱唱しまくっちゃいナイト

みんなで、その場の雰囲気を自由に楽しみたい ーこれはハナレグミの永遠のテーマ

10月13日より待望の全国ツアー『TOURうたう』をスタートさせるハナレグミ。昨年10月28日に行なわれた『TOUR あいのわ』の最終公演となった日本武道館ライヴ以降、彼は一体、どこ でどのような時間を過ごしてきたのだろうか? そして今なぜにライヴ・ハウス・ツアーを敢行しようと思ったのか? ハナレグミとしてのデビュー以来、7年半ぶりとなるライヴハウス・ツアーを控えた永積 崇に話を訊いた。

──ZEPPツアーが目前に迫ってきました。昨年秋の『TOUR あいのわ』以来、約1年ぶりのツアー。まずは、『TOUR あいのわ』の最終公演となった日本武道館でのライヴ以降、永積くん がどんなふうに過ごしていたかを聞きたいんだけど。やっぱり武道館ライヴを終えたあとは、いつものごとく抜け殻状態に?

永積うん。いつものように燃え尽きてホワイトな状態になった(笑)。

──韓国でのライヴはどうだった?

永積(原田)郁子とかおおはた(雄一)くんとか5人ぐらいのミュージシャンで行ったんだけど、すごく楽しかった。『空中キャンプ』というお店でライヴをやったんだけど、そこのコたちがすごくウェルカムな感じでさ。

──お客さんは、じっと聴き入ってる感じ?

永積いや、ワーッと盛り上がってくれて、結構エモーショナルなんだよね。なんかお祭り的な感じだったな。『空中キャンプ』ってお店だけに、スタッフもお客さんも、みんなフィッシュマンズが大好きで、そういうコたちに向けてフィッシュマンズの曲を何曲かカヴァーしたり。あとは自分が歌いたい曲を歌い倒すという感じでやって。日本語の曲を海外で歌うということの新鮮さも味わうことができて、すごくおもしろかったね。

──2009年の活動はそれが最後で。

永積うん。それでレコード大賞(※『あいのわ』が第51回日本レコード大賞 優秀アルバム賞を受賞)が決まって、年末にはサイパンに行って。サイパンではゴルフしたり、プールサイドでカクテル飲んだりしてました(笑)。

──リゾート感丸出しで(笑)。

永積そう。正月、初海外ですよ。まあ家族旅行なんだけどさ(笑)。それで5日間くらいサイパンでのんびりしてから、一旦帰ってきて、今度はインドとタイに旅行に行ったの。

──超過密スケジュールだ(笑)。

永積なんか急に旅行づいちゃって。

──インドには前から行こうと思ってたの?

永積何年か前から"インド"というキーワードは耳にすることが多くて。それこそ高校時代に友達が1ヵ月くらいインドを旅したこともあったり。いつか行ってみたいなって思ってたら、知り合いの人が "インドに行くけど、一緒に行かない?"って誘ってくれて。

──インドはどの街から入ったんだっけ。

永積バラナシという一番濃い街。いわゆる聖地だよね。みんなそこに死にに来るみたいな。そこに直イン、直アウトで(笑)。

──ディープな場所のみ(笑)。

永積そうそう。それこそ、カルカッタとかデリーから電車で20何時間とか揺られて行く街なんだけど、冬の時期だけバラナシに直行する便があって。でも、おもしろかった。動物王国みたいな感じで。牛とか猿とか羊、犬、猫、みんな放し飼いだし。ハッキリ言って、バラナシってやること何もないんだよ。

──ガンジス川が、ただドーンとある感じ?

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インド、ガンジス川(撮影:永積 崇)
永積そう。ガンジス川がドーンとある感じ(笑)。それでとにかく動物がいっぱいいて、人が山のようにいて、ボロボロの建物がいっぱいあって、っていう街なの。俺は別に瞑想したいわけでもないし、やることないから、買い物で値段の交渉したり、あえて自分の騙され具合を楽しんでたみたいなところもあったね。あとはガンジス川に触ってみて、"うわ、汚ね~"みたいな(笑)。トイレの水がばーって流れてる下で、露店の子どもが、皿洗いしてて。"絶対ここで食いたくね~"とか思ったり。



──インドに行った人って、一生行きたくないと思うか、大好きになるか極端に分かれるっていうけど永積くんの場合は。

永積俺は、すごい嫌いというふうにはならなかった。あの国じゃないと刺激されない、何かがあるなという気がすごいしたんだよね。やっぱり痛みがあるんだと思う、インドには。ただ美しくは過ごせないというか。セーヌ川を見て綺麗だねとか、そんなふうに優雅には暮らせないなと思った。横みたら人が死んでる、みたいな感じだから。

──本当にそういう感じなんだ。

永積うん。でも、よく言われる"死体が路上に転がってて"とか、そういう感じじゃなくてね。普通に商店街を歩いてるとき、バンが横を通って、中をぱっとみたら、死んだおばあさんが寝てたりとかさ。すっごい普通に。

──生と死がフラットに存在してる感じなのかな。

永積そうだね。割とそんな感じ。あとは河川敷で人が燃えている様をじーっと見たり。でもなんか別に……。

──それをもって、人生観が劇的に変わったとか、そういうことでもなく。

永積うん。そういう体験って時間が経つにつれ、じわじわ効いてくるんだろうね。今は刺激が身体の奥の方にある感じ。インドで過ごした時間というのは、これから自分の中の何かに確実に作用するような感覚はあるね。なんか、こう針灸みたいもんかな。針治療とかも、患部に1回痛みを与えて、自己治癒力で身体を改善してくみたいなところあるじゃん。なんかインドにはそういう痛みだとか刺激があるような気がした。その刺激が欲しくなったら、また行くだろうし。

──結局、バラナシには何日ぐらい滞在したの?

永積10日間。それでタイに移って。タイはバンコクとノンカイという田舎の町にいって。ノンカイっていうのはラオスとの国境の町なんだけど、メコン川沿いのドミトリーみたいなところに飛び入りで泊まって。そしたらハイチ救済のチャリティ・ライヴがあるので遊びに来てくださいみたいな感じで誘われて、ドミトリーの下の河川敷に止まっている大きな屋形船みたいなところのバックパッカーの人たちがライヴをやっていて。そこで僕も自分の歌とかちょっと歌ったの。

──反応はどうだった?

永積日本語の曲にすごい興味持って、おもしろがって聴いていたね。そのときどんとさんの「波」をなんとなく歌いたいなと思って歌ったんだけど、日本に帰ってきたら、その日が、どんとの命日だったって知って。それまで「波」って、ちゃんと歌ったことがなかったのに。なんか不思議な巡り合わせを感じたな。

──そんな感じで年明けからあちこち旅して英気を養って、その間、何か音楽的な活動は? たとえば旅先で曲を作ったり。

永積それはなかった。自分の場合、移動しながら考えることはあんまりないから。ある程度、腰を落ちつけて、曲を書くことに入り込みたいタイプだしね。

──帰ってきてから新しく曲を書いたりは。

永積曲は書いてるよ。今も書いているし。うん。

──旅先で得た経験が曲作りに影響するようなことはある?

永積う~ん……直接的にはないかもね(笑)。ただインドとか行って、自分の中で何かが吹っ切れたような感覚はたしかにあると思う。生ぬるいこととか簡単なことって、やっぱりつまらないなとか、何をやるにしても死ぬ気でやったほうが俺は好きだなとか。そういう気持ちを改めて確認することはできたよね。

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