live house live

ハナレグミがライブをする場所はどこが最適なのか-。 その答えは、聴き手がハナレグミのライブになにを求めているかによって変わってくるだろう。昨年9月に開催された代々木体育館でのライブ『オアシス YOYOGI DE 360°ステージ囲みまくって熱唱しまくっちゃナイト』は、ふと、心の奥底に閉じ込めている個人的な感情に向き合わされる瞬間もあったが、全体的な印象でいえば、町内会のお祭りに遊びに行くようなカジュアルさと親密な雰囲気をもっていた。座席はあったものの、喉が渇けばいつでも席を立ってビールを買いに行くことができるし、席があっても、会場全体を使って自由に踊れるような雰囲気があった。そして、同年11月、恵比寿リキッドルームでのライブハウス公演「live house live」は、まさにバンドサウンドとしか言い様のない音が発せられていた。さらにサポートギターをあえて加えなかったことで、ギタリストとしての永積崇も堪能できるライブになっていたように思う。

では、ホールを中心にした全国ツアー「TOUR オアシス」はどうだったか? 1月28日からスタートしたツアーの東京公演、NHKホールの2日目。ホールならではの魅力の1つとして、まず、照明の多彩さがあげられるだろう。開演直前の会場内は「あおい きれい」のSEとともにブルーの光が照らされ、やがて、少しずつ明度が下げられていく演出がなされていた。陽が少しずつ翳り、夜を迎えるように、もしくは、だんだんと深海に潜っていくような感覚に陥るなか、ステージ上にメンバーが登場。そして、暗転と同時に、永積が<♪だれでもない/どこにもないぜ>と歌い出すと、客席からは大歓声があがった。しかし、彼の顔はまだ見えない。アコギを弾く手元だけにライトが照らされたまま、言葉の1つ1つに火を灯すように丁寧に歌い紡いでいくと、2番でバンド演奏が加わるとともに、照明も一気にステージ全体を照らした。<闇の向こうの光><光の先の闇>を視覚的に体感させてくれた1曲目の「光と影」だけでも、彼がホールで表現したいことが詰まっていたように思う。

また、冒頭から、体育館やライブハウスとの声の響きの違いを感じた人も多かったのではないだろうか。天井の高さに加え、のちにステージ後方にも広がっていく、野外のようにヌケのいい空間でありながらも、歌声の陰影などの微妙なニュアンスが損なわれることなく、聴き手の耳まで届く、きめ細やかで立体的なサウンドプロポーションを保っていた。よりCDに近い歌声を求める聴き手には、ホールという空間がいちばん合っているだろう。  2曲目の「あいのわ」の前奏で紗幕がおりると、椰子の木が立ち並ぶ南国風のステージがお目見えした。会場内が眩しい光で満ち満ちた瞬間の<♪あいのわ>の力強いロングトーンでは、客席から自然と拍手が起こり、さらに最後の<♪突き抜ける喜び/あいのわ>を、まるで四股を踏んでるかのように見えたくらい、目一杯のパワーで歌い上げ、客席も席ほどよりも大きな拍手を贈るとともに、あちこちから「タカシー!」という声があげて賞讃した。うん、今日は歌声をじっくり聴く日だなと思ったのもつかの間、「Crazy Love」はスタンドマイクのみで客席をあおり、おなじみの「♪ナナナ」の大合唱を巻き起こした。続く、MCで「今日は座ってみれるんだろうなと思ってた人もいると思います。でも、今日は座れませんから!」と宣言すると、ホーン隊が前面に押し出された「レター」に続き、客席の手拍子を1回止めてテンポを正した「大安」では、これまでにないくらいのファンキーなグルーヴをみせた。特に真船のブリブリした黒いベースにのせた永積のアコギソロから、ジャンプを経てKUNIに渡したソロ回しに大興奮。<♪言葉になんて"ぜんぜん"ならない>というフレーズに込められた汗たっぷりのフィーリングも生でしか感じることのできないエモさがあった。