弾きが旅だよ人生は!

代々木第二体育館2daysから約1年8ヵ月ぶりとなるハナレグミのワンマン・ライヴ。会場には、この日が来るのを今か今かと待ちわび続けてきたオーディエンスがギッシリ。とはいえ、場内に漂う雰囲気はいたって穏やか。友達連れは開演に先立ち早くもビールで乾杯し、会場のそこかしこではシャボン玉がふわふわと飛び交い、そして、お母さんに連れられたチビッ子が、そんな光景を見つめながらベンチで足をブランブランさせている。もちろん、みんな笑顔。この"ゆるりと待たれてる感じ"が、なんともハナレグミっぽいな……なんてことをボンヤリ思っていると、アコースティック・ギター片手にハナレグミがステージに登場。1曲目はニュー・アルバム『あいのわ』のオープニングを飾る「あいのわ」だ。伸びやかで力強い歌声が夕暮れ迫る日比谷の空にスカーンと響き渡る。う~ん、めちゃめちゃ気持ちいい。「みなさん酔っ払ってください。ここは"庄や"ですから。大宴会ですから。歌いますよ、歌いますよ~」という永積のゴキゲンなMCに場内も大爆笑&大声援で応える。2曲目の「音タイム」を歌い終え、アコギをエレキに持ち替えた永積がおもむろに「家族の風景」を歌いはじめると、さっきまでお祭り騒ぎだった場内のムードがガラリと一変。「マドベーゼ」、「PEOPLE GET READY」、「心空」といった珠玉のバラードが演奏されると、オーディエンスたちは、"一音も聴き逃すまい"とばかり、ステージに集中し、じっくりと耳をすます。毎度のことながら、歌声ひとつで瞬時に会場の空気を変えてしまうハナレグミの凄さをまざまざと感じさせられる瞬間。そうかと思えば、ユルユルのMCで会場の空気を一気に和らげたり、熱のこもったステージングで大爆発させたり──。ジョージ・クリントンやリー・ペリーともタメを張る、ド派手な衣装に身を包んだ永積の姿は、まるでライヴという名の祭りをつかさどるファンキーな祭司のようだ。

ステージ中盤ではブルース・ハープの曽我大穂とウッド・ベースのガンジー西垣を交え、ボブ・マーリィのカヴァー「Three Little Birds」~ohanaのセルフ・カヴァー「ヒライテル」~「Wake Upしてください」をメドレー形式で披露。「ヒライテル」の最中では、「今夜はブギーバッグ」の一節がアドリブで飛び出す一幕も。この日、ライヴが行なわれた日比谷野外大音楽堂は、永積にとって過去に何度も印象的なステージを繰り広げた、いわば"ホーム・グラウンド"ともいえる、お気に入りの場所。会場のあちこちから聞こえてくる子供達の嬌声や、吹きぬける風の音、鳥の声、そして場外からの声援までも味方に付けて、いきいきとしたパフォーマンスでグイグイとオーディエンスを引っ張っていく。