で。門出を祝いたい気持ちはあるのに、どこか引き留めたいような気持ちもあって……。この日の会場に詰め掛けた多くの人たちが、多かれ少なかれ、きっと同じような気持ちを胸に宿していたことだろう。スパッとキレイに割り切れないビミョーな気持ち。思えば、SUPER BUTTER DOGというバンドが鳴らしてきた音楽も、なんとも割り切れない独特なフィーリングをもった音楽だったように思う。
アメリカ南部のソウル・フードのガンボのように、5人のメンバーが持ち寄った雑多な音楽的要素をグツグツとゴッタ煮することで生まれてくるバタードッグのサウンド。その味わいは、めちゃめちゃホットなようでいて、どこかクールで。ものすごく切ないようでいて、どこか笑えて。とびきりナンセンスなようでいて、どこか意味深で。つまり、ここでいう“どこか”のあとに続くものが彼らの楽曲を、よりいっそう味わい深いものにするシュガー&スパイスの役割を果たしていたわけで、その絶妙なサジ加減は他の誰でもない、この5人にしか出来なかったことなんだと思う。しかも、メンバーそれぞれが不器用なだけにサジ加減も極めて目分量。だからこそ他の誰にも決して真似することはできないのだ。
不器用といえば開演前と終演後に流れていたBGMもしかり。チェッカーズの「I Love you, SAYONARA」、おニャン子クラブの「じゃあね」、たまの「さよなら人類」と、明らかに解散にひっかけたベタベタな選曲なんだけど、冗談だとは分かっていても、ひとつひとつの歌詞が、ふとしたはずみで心に飛び込んでくる。「コミュニケーション・ブレイクダンス」の歌詞になぞらえていえば、ジョークひとつがナイフに変わって、胸の痛いところにチクチクと突き刺さる。SUPER BUTTER DOG、まったくもって不器用なバンドである……。
・テーマ(インスト仕様)に合わせ、それぞれの顔写真が大きく印刷されたステージ後方のパネルから、メンバーがひとりひとり登場。「じゃ、ブッ飛ばしていくよ!」という永積の言葉を合図に、インディーズ時代の代表曲「犬にくわえさせろ」で、この日のライヴは、いざスタート。ステージには元メンバーである女性コーラスMEGの姿も。躍動感溢れるバンドの演奏に乗せて、MEGのゴスペル・タッチなコーラスと永積のソウルフルなヴォーカルが絶妙に絡み合うサマがなんともスリリングだ。そのままMEGを交え、「真夜中のスーパー・フリーク」「ゆっくりまわっていくようだ」という初期の名曲を続けて演奏。踊れるのに、やっぱり、どこか切ない……。特に初めて日本語詞を書き下ろしたという思い入れのある1曲「ゆっくりまわっていくようだ」のイントロで永積がマイナー・コードをカッティングした瞬間、さっとセンチメタルなムードが会場に広がっていくのを感じたのは、きっと僕だけではなかったはずだ。そんなセツナ混じりの雰囲気の中、この日、最初のMCで永積から驚愕の事実が告げられる。「今までメンバーに黙ってたんだけど、〈真夜中のスーパー・フリーク〉の歌詞は、8割がたウチのお袋が書きました」。なぜ、今、この場で、その告白!? あまりにも、だしぬけな発言に、観客はもちろん、ステージ上のメンバーも素で驚いている(笑)。ここからバンドは再び、「FUNKY労働者」「YO!兄弟」「日々GO GO」といったファンキーなナンバーを立て続けに披露。「日々GO GO」では、「YO!兄弟」から演奏に加わっていたゲスト・プレイヤー、田中慶一のパーカッション・ソロに続けて、盟友的ヒップホップ・グループ、RHYMESTERの宇多丸とMummy-Dが登場、そのまま、両者の共演曲「This Y’ all, That Y’ all」になだれこむ。「みんな、バタードッグよりイイ顔見せられる!?」という宇多丸のMCに後押しされて場内のムードも俄然ヒートアップ。言うまでもなく、みんな最高にイイ顔だ。


1 犬にくわえさせろ
2 真夜中のスーパー・フリーク
3 ゆっくりまわってゆくようだ
4 FUNKY労働者
5 YO!兄弟
6 O.K
7 日々GO GO
8 This Y'all,That Y'all