突如発表された、レキシとオシャレキシ(上原ひろみ)による東名阪ライブ。しかし、レキシと上原ひろみがいったい何をやるの?まさか対バン?それともレキシのバンドに上原がゲストで入るの? いや、そもそも、レキシと上原ひろみの関係って?
様々な「?」が飛び交う「レキシ対オシャレキシ~お洒落になっちゃう冬の乱~」について、2人が少しだけ、語ります。

text:川口美保

1.出会ったその日に挑戦状?

―― なぜこの二人が一緒にライブをするのか、二人のつながりを明らかにするために、まずは二人の出会いからお話していきましょうか。

上原

最初、どこで会ったっけ?

池田

俺の知り合いの洋服屋さんが浅草にあって、その店で三原さん(上原さんの夫で、ファッションデザイナーのMIHARA YASUHIROさん)と会って、三原さんが近所のジャズクラブにひろみちゃんと行くからと、一緒に行ったのが最初。

上原

そうだそうだ。私が大好きなジャズバーで、そこに誘ったんだ。

池田

忘れもしない。

上原

で、「どんな音楽やってるの?」って訊いたの。池ちゃんのこと全然知らなかったから。そしたらいろいろ弾いてくれたんだよね。

池田

いやいやいや、それ、ざっくりだわ。これは、俺はちゃんと説明しなくてはいけない。まず、ひろみちゃんはそこに地元のミュージシャンたちをいきなり呼びつけて、いきなりセッションはじめて、「SPAIN」(チック・コリア)を弾き始めたの。20分くらいバーーッ!って。俺はそのとき初めて上原ひろみが生で弾くのを目の当たりして、圧倒されて「うわあ……」ってなっているときに、「お前、どんな音楽やんの?」って言われたんだよ!

上原

そんな言い方してないよ!

池田

言い方はそうじゃなくても俺にはそういう感じに聴こえたの。挑戦状かのように。それで、俺は「歴史のことを歌にして……」みたいなことを話した。その頃って、まだレキシでライブもそんなにやってないときで。


―― アルバムは何枚目が出ていた頃ですか?

池田

ちょうど2枚目の『レキツ』が出たばかり。弾き語りでもそんなにライブやってない頃に、「どんな音楽やってるの?」と言われて、「こうこうこういう感じで」と答えたら、「ちょっとやれ」、と。「いやいや、まだやれるほどのものじゃない」と言ったら、「チェッ」ってすごい顔したの。

上原

ふふふ。

池田

ホントね、苦虫をつぶしたような、勝新太郎くらいの顔して「できねーのか」って表情になったから、「はい、やります!」って。


―― それでやったんですね。

池田

やったのよ。

上原

しかも何曲もやってくれたよね。

池田

そうそう。そのときに自分ができる限りのすべてをね。「狩りから稲作へ」と「Let’s忍者」とかやったね。

上原

それで、私、飛び入りしたんだよ。

池田

そうそう。コール・アンド・レスポンスやっていたら、いきなり入ってきて、連弾。

上原

そのとき初めて一緒にやって、本当に楽しくて。その次は、今度は池ちゃんが浅草でクリスマスにライブをやったときに飛び入りさせてもらって。

池田

それが2011年だね。

2.お互いの「自由さ」に共鳴?

上原

2012年はライジングサンロックフェスティバルに出演すると聞いたから、「私も出るよ」という話をして。前の年もお互いライジングには出たけれど、日程が違っていて一緒にはできなかった。でも2012年は同じ日の出演だったから、レキシのライブに飛び入りさせてもらった。

池田

そのライジングでやったときの形が、今回のレキシ対オシャレキシのライブに一番近い形になると思うんだけど、そのライジングのときは、俺のライブの途中でひろみちゃんがステージに入ってきて、ピアノを奪い、アレンジがお洒落になって、バンドメンバーも乗っ取られるという感じで。

上原

メンバーもひとりひとりお洒落なコードを弾きはじめて。

池田

で、俺が「なんなの? あなたはなんなんですか!」と訊いたら……。

上原

「オシャレキシ!」。

池田

そこでレキシネームが決定したんだよ。俺から授かったのではなく、ステージ上で自分で言った!

上原

ははは。

池田

それで「誰だおまえは! お洒落になんかさせない!」という、攻防に次ぐ攻防。

上原

「レキシ初の反対勢力だ」って言われて(笑)。そのライブは本当に楽しかった。

―― 振り返ると、上原さんは最初に浅草でレキシに出会ったときに、よほどレキシの音楽が気に入ったんですね。

上原

そう、衝撃だった! 私はいつも即興演奏をしているけれど、いわゆるポップスの世界で、こんなに自由に歌いながら即興する人を初めて観たんです。それでライブ観に行ったら、しゃべりの即興もすごいなぁと思って、なんか同じものを感じて。

池田

ははは。まあ、確かに「自由」っていう意味ではね。でも「同じもの」なんて言われるとちょっと震えるけれど……。わははは。

上原

ライブは生き物だから、その曲が今日どうなるかわからないというところに音楽的な興奮があるわけで、私がいつもピアノでやっていることを、しゃべりや歌で池ちゃんはやっているんですよね。それで、わあ、すごい! と思ったんです。

池田

まあ、でもホントに、レキシのライブって、コンセプトが「自由」。「お客さんを楽しませるためなら、何やってもいい」というのがコンセプトだから。犯罪以外はね。だから、ホント、一回家帰ってもいいと思ってくるくらいだから。そのくらい自由でやってる、ということで、そこがなんか共鳴しちゃったんだね(笑)。

―― でも「乗っ取られる」とは思ってなかったでしょ?

池田

いや、ホントに! まさか乗っ取られるとはね。乗っ取るってことは、自分のものにしたいってことだからね。

上原

演奏しているとバンドの人たちとも意気投合しちゃうから、楽しいんですよね。

―― メンバーも上原さんの演奏に合わせていくんですね。

上原

そうなんです。だからライジングのときも、一緒に演奏しながらコードやリズムを池ちゃん抜きで合わせていくんですが、そうするとメンバーが「決め」とかも作ってくれて。

池田

「おまえらも勝手に何やってんの?」っていうね。ていうか、まだ乗っ取られてないからね! まだ拒んでるという状況だから。もう乗っ取られつつある、という話になってるけど!

3.初詣したから、このツアーが実現した?

―― 今回のレキシ対オシャレキシのライブはどちらからの企画だったのですか。

池田

2012年のライジングで一緒にライブやってすごく楽しかったので、また何かやりたいね、というのはあったんだけど、2013年にはスケジュールが合わず、まったくできなかったんだよね。

上原

そう。でもそれは2013年、初詣に一緒に行かなかったから。

池田

やっぱり大晦日から元旦、お正月にかけて一緒にいた人たちは、その年一年、なんらかの縁があるというのが俺の持論で。

上原

だから2012年は一緒に初詣いったからライジングができたけど、2013年は初詣行かなかったからできなかった。

池田

ははは。それを真に受けてるっていうね。

―― 『レキミ』の曲でひろみちゃんのピアノを想定してつくったという曲もありましたよね。

池田

あった、あった。「甘えん坊将軍」。

上原

でもレコーディングの日程とかツアーの日程がことごとく合わなくて、2013年は何もできずに終わってしまった。やっぱり二人で話しているだけだと形にならないことを学んだのが2013年。だから2014年はお互いのマネージャーさん同士でしゃべってもらって、やっと形になった。

池田

ライブもね、何回か寸前までやろうという話になっていたんだけど、でも直前になってやっぱり無理かもってなって。まあ、俺はそれでも全然良かったんだけど!

上原

2013年、私はレキシのライブを2回も観に行ったのに、両方出してもらえなかった。

池田

「出してもらえなかった」って。必ず出るっていうのも約束されていないからね!

上原

出たそうな顔でずっと見てたんだけど。

池田

こっちは逆に、討ち入りみたいなものだから、ドキドキしてた。どっから来るかわからないから。

―― じゃあ、2014年は2年越しで一緒にライブができるということですね。

上原

初詣に行ったの!

池田

満を持して行ったんだよね。書き初めまでしたもんね。「オシャレキシ」って書いてある。

―― 上原さんは2014年を迎える年末年始はブルーノート東京での7日間連続ライブでしたよね。

池田

そうそう。

上原

ブルーノートの1週間ライブを終えて、初詣に一緒に行ったの。だから今年は縁がある!

4.上原ひろみ、レキシの楽曲を乗っ取る?

―― ライジングサンでの共演の形が、今回のライブに近いということでしたが、もう少し具体的にどうなるのか教えてください。

上原

まずこのツアーの楽器編成を一緒に決めて、去年の9月くらいから、レキシの曲にお洒落なコードを書き加えたりして、編曲を始めました。

池田

このライブが決まる前からもう始めてたよね。「いつそうなってもいいように、もうやっとくの」って言って、各アルバムから3曲ずつ選曲してた。

上原

自分の曲づくりとレコーディングもあったから、その合間を見ながら。

池田

だから今回の『レシキ』ができる前にも、新譜は何曲入りかと訊かれた。そこを想定してやるからって。


―― つまり、今回のライブは、レキシの楽曲アレンジを全部上原さんが手がけているということなんですね。

上原

そうです。ホーンのアレンジも全部やっています。

池田

だから、本格的な乗っ取り。ちょっとした事件です。まあ、そこからは細かい内容はライブに来てからのお楽しみだけど、ストーリー仕立てのね(笑)。

上原

バンドメンバーが本当に音楽好きな人たちなので、柔軟性がすごくあって、元のレキシにもすぐ戻れるし、私のアレンジをやればお洒落になるし、すごくいいバンドなんですよね。

池田

ミュージシャンって、決まったことをやるのはそれはそれでできるけど、その先に予期せぬことが起きたときにどれだけ対処できたかとか、思いがけない場所に行けたときにこそ、喜びがあって、そこでうまくいったときは、自分も嬉しいし、お客さんも嬉しいし。


―― 一緒に驚けますからね。

池田

そうそう。その先に喜びがあるからね。

上原

そういうミュージシャンたちだから、一緒にやっててすごく楽しいし、私も基本的に決まっているものよりも、毎日変わって、どうなるかわからない白紙状態みたいな方がやりやすいから。

―― 上原さんの選曲もどのようになっているか楽しみです。

上原

レキシのアルバムを一枚目から聴いていくと、本当にいい曲が多いんです。その中で選んで「この曲がやりたい」というのを相談したら、採用されて嬉しかった。

池田

やっぱりオシャレキシっぽい選曲になってて、選曲の時点で、これはいつもと違うなって。

上原

全部のアルバムから網羅しているので、全アルバム聴いてから来ないと、どう変わったのか、元がわからない。だからお客さんには4枚全部聴いてきてほしいですね。

池田

いままでレキシですら、ライブでやったことない曲もやります。


―― 上原さんも、ものすごく聴き込んだ上での選曲なんですね。

上原

普段からめっちゃ聴いているんですよ。海外でのツアーも長いから、疲れたときに聴いたり、移動の飛行機がすごく揺れて怖いときにレキシを聴くと、絶対大丈夫な気がする。

池田

ははは。ホントそれ、ひろみちゃんからよく言われるんだけど、それが一番嬉しい。

上原

だから一枚目から選曲して、一曲ずつアレンジしていったんです。

池田

そのたびに「この曲できあがった」とメールがくる。

上原

楽曲のすべての楽譜が書き上がったときは、イタリアのツアー中だったんだけど、イタリアから電話したもんね。

池田

国際電話なんかかかってきたことないから、なんだろう、この番号と思って、オレオレ詐欺かと思って出てみたら、「全曲アレンジ終わったよ!」っていう電話だった(笑)。

5.このライブで政権交代?

―― すでにリハーサルは一度やったそうですね。

上原

一回やりましたね。

池田

しかもレキシの武道館公演の前に!

上原

バンドメンバーが私とのツアーをすごく心配してるというので。そんな心配しなくても大丈夫だったのに。

池田

いや、でもバンドは、心配というか、やっぱりドキドキでしょ。

上原

楽譜を先に渡してあったのですが、わかりにくいリズムのグルーヴとかはサイモン(HIROMI THE TRIO PROJECTのバンドメンバーで、世界的ドラマーのサイモン・フィリップス)に叩いてもらって。

池田

そう、お手本をサイモンが叩いて、それを音声で送ってきて、「これ聴いて。こんな感じで」って。いやいやいやいや、参考のレベルが凄すぎるっていう。


―― しかも武道館の前に。

池田

そうだよ、武道館のリハやらせてよ!って。

上原

でもみんなひどかったよね。ツイッターで「無事帰れるのか」って。

池田

ははは。リハ前のメンバーのつぶやきが「不安でしょうがない」みたいなのばかりで。「今日は体調が悪いのでいけません」とか仮病使ってるヤツとかね。

上原

リハ終わった後に、「とあるリハから無事生還」と。

―― これからまた上原さんも欧米ツアー&ジャパンツアーがはじまりますし、そうなると、レキシでのリハーサルはなかなかできないでしょうし。

上原

そうなんですよ。レキシとのライブの初日が、私自身の全国ツアーの千秋楽の2日後で、しかも同じ会場でなんです。

池田

だから、ひろみちゃん、絶対、自分のツアー最終日のテンションで来るじゃん。マックス状態でくるでしょ。そこに俺らはぶつかっていかなくてはいけない。ヤバいな。40キロくらいマラソンしてからいった方がいいんじゃないかな。

―― もちろんレキシのライブには多くのゲストが来ていますが、それはレキシの世界の中にゲストが入っていく感じですが、今回は全然違いますもんね。

池田

そう、乗っ取りだからね。だから俺が何としても死守。

上原

まだメンバーの人とは先日のリハーサルで一回しか会ったことなくて、そんなに仲良くなれてないから、これから徐々にみんなと仲良くなれたらいいな。

池田

そうね、そこも乗っ取っていくんだろうね。メンバーがどう乗っ取られていくか、いろんなドラマを含めて、このツアーでは音楽模様アンド人間模様を観ることができるんじゃないか、と。

―― 政権が変わるかもしれないわけですからね。

池田

ホントにね。感動のスペクタクルですよ。あ、でも、乗っ取られちゃったら、アルバム5枚目の名義は「オシャレキシ」になるかもしれない。まず、インストになる。それで、フィーチャリング・レキシになってるかもしれない。

6.レキシ対オシャレキシ、果たして……?

池田

このライブを発表した後、お客さんの中に「今回のレキシ対オシャレキシのライブには稲穂は持って行っていいのだろうか」というつぶやきがあったんだよね。

上原

持ってきてほしいよね。ちょっといつもよりお洒落にして。

池田

ああ、そういうことだよね。だってお客さんもどっちにつくか、というのがあるからね。

―― 上原さんのファンも来るでしょうからね。

上原

いや、ほとんどがレキシファンだと思いますよ。

池田

「レキシ対上原ひろみ」じゃなくて「レキシ対オシャレキシ」だからね。

上原

99%レキシファンだから、私はみんなに受け入れてもらえるようにがんばらなきゃ。

池田

そこはそこでひろみちゃんの中で闘いがひとつあるんだもんね。

上原

そう、アウェーなところに一人乗り込むんだよ?

池田

でも、それ、得意じゃん。それ、ずっと何年もやってるって話じゃん!

―― そうやって自分の名前を誰も知らない世界に出て行って、ピアノでお客さんの心を掴んできた人ですからね。

池田

ライブ終わったら、最後オシャレキシコールになったりして。「オシャレキシ! オシャレキシ!」って。

上原

「レキシコール」ってあるの?

池田

基本的にはないけど、オシャレキシを讃えるコールになりそうなのを俺がどう阻止するかでしょ。これはハードル高いよ。

上原

大丈夫だよ、みんな池ちゃんのファンなんだから。

池田

怖い! これが怖いんですよ。ホントに。

上原

私の方が不安だよ。

池田

いや、こうやっていつも自分の原動力をつくってるでしょ! 困難が大きければ大きいほど、それを原動力にするからね。

上原

ふふふ。楽しみだね!

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