弾きが旅だよ人生は!

ここから一転、ステージはアッパーな展開に。「Jamaica Song」の中盤でバンドが繰り出すダンスホールレゲエのビートに乗せて永積がラガマフィン風のMCを披露すると場内からは大きな歓声が沸き起こる。続けて演奏された「…がしかしの女」では、永積とおおはたが、めくるめくブルージーなギター・ソロの応酬で会場を一気にヒートアップさせる。ノー・ゲストだけに、もちろんマダムギター長見順の歌唱パートも永積が担当(笑)。"…がしかしの男"が熱唱する"…がしかしな女"ゴコロにオーディエンスも温かな笑いと大きな歓声で応える。そしてザ・バンドを思わせるアーシーで滋味豊かなサウンドが心に沁みる「あいまいにあまい愛のまにまに」、永積の奏でる小気味いいギター・カッティングとグルーヴィなバンド・サウンドがスウィングして、えもいえぬ昂揚感を生み出した「大安」の2曲を歌い終えると永積がしみじみとした口調で一言。「こみ上げますねえ」。本編最後は「明日天気になれ」。この曲の演奏にあわせて、カップル、友達連れ、親子、はたまたこの日は外国人客まで、さまざまなオーディエンスが、最高の笑顔で陽気にハンドクラップしながら踊る光景を見るたびに、毎回なんともいえない多幸感を心の底から感じてしまう。

鳴り止まない拍手と歓声の中、アンコールに応えるべく永積が独りでステージに登場。「ここから長いですからね」というMCに場内からは喜びの歓声が。永積はアコースティック・ギターを手に取るとおもむろに「サヨナラCOLOR」を歌いだす。そして「ここからじゃっかんカラオケ屋状態になるんで(笑)」というMCとともに、ぱらぱらと楽譜集をめくって永積が選んだ楽曲は、ムーンライダースの前身バンド、はちみつぱいの名曲「塀の上で」。センチメンタルなメロディに愁いを帯びた歌声が淡く滲んでいく。続けて披露されたのは友人である女性シンガー児玉奈央に提供した新曲「SPARK」。琴線を揺さぶるエモーショナルなメロディに乗せて、高まる心の動きを切々と歌い上げる極上のスロー・ナンバーだ。徐々に熱量を上げていく歌と演奏に合わせるかのように、胸騒ぎにも似た衝動が身体を駆け巡っていくのがはっきりと感じられた。そして、ここで再びバンド・メンバーをステージに呼び込むと、ジャジーで軽妙洒脱なアレンジが施された「ボク・モード キミ・モード」を披露。そして再びポロリとギターを爪弾くと「心空」「家族の風景」を続けて演奏。アンコール最後の「ハンキーパンキー」は、ガンジーと中村が奏でるトライヴァルなビートに乗せ、永積、おおはた、大穂がアフリカン・シェイカーで細かくリズムを刻むという変則的な演奏スタイルでスタートし、中盤から正調のバンド・スタイルに戻り、最後はガンジーが延々と奏でるベースのループで静かに終わっていくという壮大な構成だった。この日のアンコールで演奏されたのは計7曲。2部構成といっても差し支えないほどのボリューム感だ。それでもオーディエンスは、まだまだ聴き足りないとばかりメンバーが去ったステージに向けて拍手を続ける。すると、まだまだ歌い足りないとばかり永積もステージに早々と登場。ダブルアンコールでは「光と影」を弾き語りで演奏し、3時間弱に及んだこの日のライヴを静かに、そして力強く締めくくってくれた。

今後、ニュー・アルバムのレコーディングに突入するハナレグミ。今回のライヴハウス・ツアーで感じた衝動が、きたるべきニュー・アルバムにどのような影響をもたらすのか? 今から大いに期待したい。